山小屋泊の中ではだいぶ遅めの 6:50発
富山県を代表する立山の主峰、「雄山(おやま)」に登ります。
左下の赤い屋根が「一ノ越山荘」、雄山の頂上は霧の中。
おだやかな低山しか登ったことがない私にとって、雄山は大変な急斜面に見える。
それに足元は岩と砂ばかりで滑りやすい。
登っていく人が足を滑らすたび、コロコロと転がってくる小さな石に、よからぬ想像が増すばかり。
このコースは諦めるものと思っていましたが、私が言う「無理」が、友人にはどうも伝わらない。
仕方なくとりあえず出立。
雄山までは一気に300mを登りきらなければいけません。
恐怖で途中何度か動けなくなりました。自分でも「ほらね」って感じです。
一ノ越山荘が小さくなってきたけど、まだ高度100mも登っていない様子。
登り切れるのか?
上を見上げると恐怖で動けなくなるので、岩にしがみつきながら、1m先だけ見ながら進みます。
へっぴり腰だっだんよなー、この時。
下りてくる人も途切れないほど続き、雄山は大渋滞です。
1時間に及ぶ恐怖に打ち勝ち、雄山の頂上に辿り着きました!
ついに標高3000mの世界まで上がってきましたよ。
雄山の三角点(山の頂上に設置され、緯度・経度が正確に求められている基準点)に立つだけで、絵になります。
ここは雄山からさらに先、大汝山(おおなんじやま)。
今回の最高地点、標高3015m
半べそをかきながらも、くじけずここまで登ってきたのには理由があります。
「トランスジャパンアルプスレース(TJAR)」を応援するため!!
TJARは、「日本一過酷」と称される山岳レースです。
日本海の富山湾から、北・中央・南アルプスを縦断し、太平洋の駿河湾(静岡県)まで、約415kmを8日間以内に踏破するもの。
累積標高差は富士山登山7回分。
山小屋で補給できるのは水だけなので、テントや食料含め、必要な物は全て自分で背負ってレースに臨みます。
大会は 2年に 1度の隔年開催で、私は2012年にこのレースの特番を見て以来のファン。
選考会や2度の抽選を経て、選ばれた30名の選手にエールを送りたくて、ここまで登ってきたんです。
自分の足で登ってみてはじめて、山の素晴らしさや、怖さも分かり、目の前を通過する選手へ思いが溢れます。
8/11 0時に富山湾をスタートし、ここまでわずか8時間でやってくるトップ選手たち。
登山者の多くが、TJARをご存知のようで、たくさんの応援が飛び交います。
その声援に選手も笑顔で応えます。
トップ選手はこんな岩場でも跳ぶように走り抜けていきます。
一日目で「北アルプス」、二日目には「中央アルプス」三日目にはすでに「南アルプス」に到達する選手もいて、わずか5日ほどでゴールする人も。
トップ選手はもちろんすごいのですが、8日間ボロボロになって、ヨレヨレでゴールする下位の選手にも心を打たれます。
選手たちはプロではなく、どこにでもいるオジサンであることが、これまた良くて、出場選手の平均年齢は40歳を超えているんですから、スゴイですよね。
1位になっても賞金や商品はないというのに、みんな必死にゴールを目指すんです。
こちらの選手は初出場の美容師さん。
鍛え抜かれた太ももがダントツ太くて、しびれました。
ご覧ください、この爽やかな笑顔。
応援を受けると、選手はこんな表情で応えてくれます。
でも実際のところ、こちらが元気をもらうんですから、不思議なレースなんですよ。
ヒョイヒョイと登ってきて、次の山目指して颯爽と行ってしまいました。
「がんばってー」 「いってらっしゃーい」 「ゴールで待ってるよー」
1位の選手を見送ったのは朝8時ですが、最後尾の選手が通過するのはさらに8時間ほどあと。
それくらい走力にはに違いがあるのです。
次の選手が到達するまで時間が空きそうなときを見計らい、隣の山「富士の折立(ふじのおりたて)」を目指します。
先の稜線を見ても、選手らしき姿が見当たらないので、登るなら今しかない。
富士の折立(標高2999m)は、かなりの勇気が必要そうです。
道行は狭く、頂上を目指す人は、みんなこうしてザック(荷物)を下ろして登っていきます。
主の分からぬザックがごろごろ転がってました。
雄山もなんとか登れたし、大汝山もクリアした。
ここまできたら富士の折立の頂上にも立ちたい!
行ってきました途中まで。
だってこんなに急なんですよ。
さすがに危険を感じ、断念しました。
友人を待つことわずかに3.4分。
ラクラクと登り、証拠写真を撮って帰ってきました。
「雄山より難しいから、ここは無理しなくて正解」なんて明るく慰められ、とりあえずここまできた自分を褒めて終えることができました。
霧が晴れると黒部ダムもよく見えるんです。
どこを見ても絶景の北アルプスでしたが、二日目前まではずっとガスっていて、こんなに見晴らしがいいのは久しぶりだったようです。
後方には劔岳(つるぎだけ)
選手は剱岳も越えて、こちらへと長く続く稜線を走ってきます。
その姿を見送れて、とても幸せな時間でした。
part4へ続く(月曜日のブログが最後だニャー)
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